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仕入屋錠前屋76 99.9%の 10

 突然スイッチが入ったように動き出した秋野は、哲の身体を押しやると湯船の栓をして湯はりのボタンを押し「服のままでもいいから浸かれ」と素っ気なく言って出て行った。そう言う本人もずぶ濡れだったが、まるで濡れてなんかいない […]

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 中二階への階段へ回り込み、秋野はぎょっとして立ち止まった。  暗がりの中に人影があったからで、そんなはずはないとはいえ、また頌英ではないかと思ったからだ。  一瞬後にはぼんやりとだが輪郭が見えてそれが華奢で小柄な女 […]

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 レイから頼んでいた書類を受け取った秋野は、他の用を済ませてようやく関口の葬儀屋に足を運んだ。  外が曇っていて暗いせいか、事務所の中は蛍光灯が煌々と点いていて、屋外とは逆に昼間のような明るさだ。葬儀屋が暗いものだと […]

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仕入屋錠前屋76 99.9%の 7

 電話越しの哲の声は普段どおりの愛想のなさだったが、後ろから誰かの声がした。  あまりよく聞き取れないが「行け」とか「書類」とかいう単語が聞こえてくる。どうやら以前会ったことがある高校の同級生が一緒にいるようだった。 […]

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「待ったか、悪ぃな」  小上がりに上がって来た哲は、猪田の向かいに腰を下ろして「先に頼んで食ってりゃよかったのに」と言いながら煙草のパッケージを取り出した。何かの書類なのか、持っていた茶封筒をテーブルの端に置く。 「 […]

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 別に何をされたわけでもないのに這う這うの体で川端の事務所を出た哲は、とりあえず最寄りのコンビニに入って煙草を買い足した。外の灰皿の脇に突っ立って、肩を丸めながら一本銜えて火を点ける。  煙草の入ったビニール袋に塩昆 […]

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仕入屋錠前屋76 99.9%の 4

「こんにちはー」  事務所のドアを開けながら挨拶したが、普段ならそこに座っているはずの仏頂面の受付嬢──受付婆とも言う──の玉井さんは姿が見えなかった。  トイレにでも行っているのかと思いながら川端の席がある方に向か […]

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 今よりもっとリスクの高い仕事をしていた頃ならともかく、仕事の場に刃物を振り回す男が乱入してきたのには秋野もさすがに驚いた。  しかも、繁華街からすぐとはいえ一応は住宅地だ。戸建てはほとんどなく、大半が集合住宅。それ […]

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仕入屋錠前屋76 99.9%の 2

 眠れねえ、と思いながら舌打ちし、哲は寝返りを打った。さっき起き出して煙草を吸ったばかりだ。それも、数本目の。  本日、睡魔は機嫌を損ねたのかまったく訪れる気配がない。  昔からたまに数日続く不眠になることがあるのだ […]