仕入屋錠前屋69 守るために向き合っている 8
「残業?」 部屋のドアの前に誰かが立っていた。アパートの外廊下は薄暗いから顔立ちは見えなくて、シルエットでも咄嗟に誰だか分からなかった。声を聞いてようやく仙田だと気付き、自分の中ではやっぱり上書きが済んでいないと思 […]
仕入屋錠前屋69 守るために向き合っている 7
日中は結構強い雨が降っていて、こんな日に出かけるのは面倒くさいなと思っていたら、夕方になってきれいに上がった。浩太から予定どおり行きたいけど問題ないかと連絡がきて、改めて落ち合う場所と時間を決める。一体何を着ていき […]
仕入屋錠前屋69 守るために向き合っている 6
「いつまで突っ立ってんのよ?」 玄関ドアが突然開き、姉の瑞穂が出てきたから仙田は慌てて一歩下がった。 今日は身体のラインが一切出ないコクーンシルエットの上質そうなワンピース。黒に近いネイビーカラーのせいか、ワンピ […]
仕入屋錠前屋69 守るために向き合っている 5
葛木が年上なのは知っているし、見た目や言動をそのまま受け取るほど、こちらも世間知らずでもない。でも、基本裏表のない葛木だから、子供っぽさを疑うこともしなかった。いや、疑う、というと言葉が悪いか。仙田は誰に聞かれてい […]
仕入屋錠前屋69 守るために向き合っている 4
葛木はドアを開けて暫し立ち竦み、ゆっくりとドアを閉めた。だが、どう考えても間違ってはいなかったので、もう一度ドアを開けた。 「……何やってんの?」 普段より少し低い声ではあるが、それは間違いなく仙田のものだ。だが […]
仕入屋錠前屋69 守るために向き合っている 3
一緒に仙田のところへ行くかとか言っていたくせに、秋野は哲を押し倒して好き放題し、疲れた顔もせず一人で出ていった。 勿論殴る蹴るの暴行を加えて抵抗したが、そんなものは屁とも思っていないクソ虎は、哲が振るった暴力の分 […]
仕入屋錠前屋69 守るために向き合っている 2
「仙田仙田仙田!」 「三回も呼ばなくても聞こえてるよー」 仙田はチェーンを外し、鍵を開けてドアを開いた。 別に防犯に神経質なわけではない。仕入屋から頼まれた偽造書類を昨夜のうちに作り終え、インクを乾かすために床に […]
仕入屋錠前屋69 守るために向き合っている 1
中華料理屋のような定食屋は今日もいつも通り混雑していて、店内は白っぽく霞んで見えた。副流煙、受動喫煙という単語はここではどんな意味も持たない。喫煙者でない人間は入る気にもならないだろうし、知らずに入店したとしても、 […]
仕入屋錠前屋68 性(さが) 10.5
目を開けたら顔の上に何かがあった。なんだこりゃと思いながら目を瞬く。徐々に目が覚めてきて、上掛けが顔の上に被さっているのだと気付いた。 確か、秋野の新しい部屋の床で寝たはずだ。土足で歩いた床に寝転がるのもどうなん […]
仕入屋錠前屋68 性(さが) 10
大きすぎる服を着た人間は幼く見えたり華奢に見えたりするものだが、哲に関して言えばちっともそんなことはなかった。 シャワー後の洗いざらしの髪が縁取る骨っぽい輪郭。秋野の服を着てスツールに腰かけ、煙草を銜えている普段 […]