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仕入屋錠前屋と開かずの小箱

 目が覚めたら目の前に哲の寝顔があった。  半分覚醒、半分眠ったままの秋野の頭の中を、色々なことがゆるゆると流れていく。  どうして哲がここにいるのだろうか。昨晩、秋野がベッドに入ったときには間違いなくいなかった。そ […]

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仕入屋錠前屋とハロウィン

 ゾンビ、魔女、ミイラ、吸血鬼、幽霊、狼男──  哲は周囲を見回した。様々な仮装をした客がひしめいている。その間を縫って食事や飲み物を出しているのは全員黒いスーツにサングラスの男たちで、この格好が店員の目印らしかった […]

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仕入屋錠前屋とクスリ

 哲はベッドに横たわっていた。  自分の部屋でないことは目が覚めてすぐ気づいたが、頭が水の中に浸かっているような感じがして、どこにいるのか分からなかった。空調の音が妙に耳につく。身じろぎしたら、糊の効いた寝具が肌に当 […]

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2020 お盆仕入屋錠前屋

「なあ、海に行きたいか?」 「てめえに海とか言われると何でこんな妙な気分になんだろうな、おい」  哲は銜えたままの煙草の穂先を揺らしながら、眉間に深い皺を刻んだ。  玄関先に立っている秋野の格好は、濃紺のスーツに淡い […]

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仕入屋錠前屋とショートケーキ

「……」  哲は目の前の物体に再度目をやり、それが勝手に消えてなくなってはくれないことを改めて確認した。  外は既に薄暗いが、晩飯を食うにはまだ早い。時間帯のせいか、ファミレスは空いていて客はまばらにしかいなかった。 […]

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理由は無い、其れ以外

 その日哲は高校時代の友人と、そのまた友人と四人で飲んでいた。  隣のテーブルに座っていた同年代の女ばかりの客──こちらも偶然四人──がちらちらと視線を送って寄越したのは、その日はたまたまそれなりの見てくれのやつらが […]

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2019-2020 年末年始仕入屋錠前屋

「てっちゃん……」 「気にすんな、噛みつかねえから」  ちらちらと背後に視線を向ける男に、哲は溜息とともにそう伝えた。  嘘ではない。哲に対しては息をするように噛みついたりするが、少なくとも哲の見ているところで食い物 […]

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呼吸の仕方も忘れてしまう

「佐崎──!」  息が止まりそうになって、次の瞬間思わず声が出てしまった。もうみっともなく追いかけたりしたくないし、とっくに諦めがついたと思っていたのに。  栄がその日、その時間にその道を通ったのは、まったくの偶然だ […]

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拍手お礼 Ver.26 (24の別Ver)

 初心でがむしゃらな者など一人もいないが、それでも、なにかの新兵訓練に紛れ込んだ気分だった。  警備員とか民間軍事会社の社員とか、実地に役立てるやつらはいい。だが、自分は一体なぜここにいるのだろう。  昔ならともかく […]

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2018-2019 年末年始仕入屋錠前屋

 大晦日と言っても、特段変わったことはない。  休みになる企業や店も多いのだろうが、秋野の取引先には定休日などないから、秋野にとっては普段どおりの日だ。  仕事を終えて外で飯を食い、部屋に戻って数時間。そろそろ寝るか […]