34 あたたかくして、食って寝ろ
一週間で戻るつもりが十日、二週間と仕事が延び、十七日目にして秋野はようやく自分の住まいに辿りついた。 自分が責任を負う荷の手配だけなら予定どおり一週間で済んでいた。それなのに、依頼人の手違いから発生した諸々の問題 […]
33 幸せ 服部Ver.
ある晴れた平日の午後だった。 俺は客先での打ち合わせを終えて、取引先の事務所に寄ろうと中道を通っていた。 「あ、服部です。お世話になっております──はい、はい。あと五分くらいでお伺いしますので。では、後ほど」 […]
32 コンビニスイーツ
「なあ、これ食わねえ?」 哲が秋野の膝の上に置いたのは、透明なプラスチック容器に入ったコンビニスイーツだった。黒糖わらび餅なんたらという商品名の入ったシールが貼ってある。名前のとおり、黒っぽいゼリー状のものの上にク […]
31 お日様の匂い、洗濯物
これは幻だろうか。 秋野は困惑し、子供がするようにぎゅっと目を閉じた。確かに疲れてはいる。仕事で数週間留守にしていたからだ。哲に伝えた予定より数日遅く戻ったのだが、幻覚を見るほどのひどい疲労でもない。 もう一度 […]
28 ご飯かお風呂かそれともあたし
「ただいま。起きてたのか」 「よう」 その日秋野は予定よりかなり遅く帰宅した。もっとも、伝えたからと言って哲が秋野の予定に行動を左右されることはない。だからとっくに眠っているだろうと思ったが、哲はまだ起きていて、で […]