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仕入屋錠前屋76 99.9%の 1

「……何なんだ、まったく」  低い呟きに、秋野は床に向かって溜息を吐いた。  疲れ切った肩が重く、首が頭を支えていられないくらい強張っている。しかし、とりあえずは謝るしかないだろう。 「お取込み中申し訳なかったな」 […]

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仕入屋錠前屋75 笑っていて 4

 哲が秋野に連れられて行った家は広い敷地に建てられた日本家屋で、昔ながらの広い庭に囲まれていた。  まるで映画に出てくるヤクザの邸宅のようだが、勿論一般のご家庭なので防犯システムや警備員、侵入者を察知して群がってくる […]

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仕入屋錠前屋75 笑っていて 3

「蔵ねえ……」  それほど乗り気でない声が出てしまったのは、不法侵入はいかんとか、盗みはいけないとか、そんなことを思ったからではない。  蔵と言えば南京錠、というイメージがあったからで、錠前は錠前ではあるが、ちょっと […]

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仕入屋錠前屋75 笑っていて 2

「それってやっぱり運命よね! てっちゃんが出刃包丁でぶった切ろうとしても切れないナイロンザイル並みの赤い糸ってやつよねえ」  訳の分からないことを言ってげらげらいながら、エリは煙を盛大に吐き出した。 「何が運命だよ、 […]

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仕入屋錠前屋75 笑っていて 1

 哲はその日、服部と二人、繁華街のど真ん中のコンビニのレジに並んでいた。  哲の勤める居酒屋は要するに居酒屋らしい居酒屋で、ビールとハイボール、それから何とかサワーとかいうのが酒の売り上げの大半を占める。メジャーなカ […]

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仕入屋錠前屋74 光の渦 7

「二、三……五人? この間より少なかったのか」  聞き慣れた声がして振り返ると、秋野が立っていた。  ついさっき部屋にいた時の格好に上着を羽織っただけだが、相変わらず敏腕スタイリストがついているんじゃないかと思わせた […]

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仕入屋錠前屋74 光の渦 6

 組み敷かれ圧し掛かられて、哲は喉の奥から荒々しい唸り声を漏らした。興奮と憤怒を同時に感じる。黒い髪を両手で掴み、思い切り引っ張って頭を引き寄せた。噛みつき、舌を絡ませながら、自由になろうとしてもがく。  繋がりたい […]

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仕入屋錠前屋74 光の渦 5

「社長、お帰りなさい」  会社に戻ると、取締役の尾形が席を立って来て、後から社長室に入ってきた。まあ、便宜上社長室と呼んではいるが、実態はパーティションで区切られたただのスペースにすぎないのだが。  そうは言っても狭 […]

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仕入屋錠前屋74 光の渦 4

 高校の同級生、鴨井の顔を三秒くらい眺め、哲は首を傾げて手を差し出した。 「イタリア風居酒屋とかなんとかじゃなかったか?」  受け取ったポケットティッシュに挟まったクーポン券にはネットカフェの店名が刷られている。 「 […]

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仕入屋錠前屋74 光の渦 3

 こんなところに呼び出すなんて、あまりにも分かり易すぎる、と思いながら、哲は隆文が運転してきた車を降り、隆文に続いてその建物に足を踏み入れた。  湾岸の使われていない倉庫は、入り口にプラスチック製のチェーンがかけてあ […]