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ギフト 2

「何だそのツラ」  秋野は傷んだものでも口に入れたような表情を浮かべ、哲を上から下まで眺めて溜息を吐いた。 「いや、なんというか──想像した」 「何をだ」 「素っ裸でおっかない顔して仁王立ちしてるお前が、スケッチブッ […]

26

ギフト 1

「絵のモデルを」 「嫌だ」  姿かたちを変えたせいで頭までどうにかなってしまったのか。くだらないことを考えながら、哲は電話の向こうから聞こえる声を途中で遮った。 「まだ最後まで言ってねえのに」 「絶対最後まで聞きたく […]

04

いつかは抜け出せる 6

「……何で来たんだよ」  哲はこの世で最も嫌いな食べ物を口いっぱいに突っ込まれたような表情を浮かべ、一歩下がってこの間と同じ台詞を口にした。  約束もしていないのに現れる秋野を見て、哲が嬉しそうにしたことは一度もない […]

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いつかは抜け出せる 5

「なあ、ちょっと──おい! さ……佐崎!」  哲が立ち止まって振り返ったら、チハルが顔をしかめて走り寄ってくるところだった」 「……噛んだ?」 「うるせえな! どうだっていいだろ!」  おっかない顔で文句を垂れつつ、 […]

05

いつかは抜け出せる 4

 ミツバチの羽音のような、携帯のバイブのような。  どちらにも似ているようで似ていない音が骨に響く。鈍い痛み。切迫した何かが視野を狭めるのが分かったが、どうすることもできなかった。  もっと深く。誰も触ることができな […]

22

いつかは抜け出せる 3

「何で来たんだよ」 「何でって、用があるからだ」 「ええと、しばらく外しましょうか?」  哲は口を挟んできた猪田を睨んだが、猪田は哲から目を逸らして秋野を見た。 「もしお邪魔でしたら」  秋野も猪田も満面の、そしてよ […]

07

いつかは抜け出せる 2

 電話がかかってきてから一週間。久し振りに見るチハルは随分と柔らかい表情になっていた。 「わざわざ……えっと、ありがとう」 「いや」  向かいに腰を下ろした秋野を見て、チハルはそわそわと脚を組み替えた。長年、会う度に […]

23

いつかは抜け出せる 1

 自分がベッドの上にいると気づき、哲は音高く舌打ちした。  外は晴れているらしく、部屋の中は明るい。唸りながら寝返りを打ったら、幸い隣には誰もいなかった。  昨晩はバイトの後に知り合いと偶然会って飲みに行き、別れた後 […]

07

空を掻く指先

「あ、やべ」 「どうした」 「ああ、いや、何でもねえ。爪が」  昨晩、酔っ払って秋野の部屋に転がり込んできてソファで眠った哲は、シャワーから出てきたところだった。  秋野のスウェットは哲には長すぎる。裾を捲っている足 […]

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零度の情熱 11

 哲が床の掃除を終えた頃、フロア係が恐る恐る戻ってきた。洗って放置していた傷からまた血が出てきて舌打ちしていたところだったので、掃除を任せ、救急箱の場所を聞いて事務所に向かった。  絆創膏は普通サイズのものしかなく傷 […]