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拍手お礼 Ver.18

Ver.18 薮内と桑島 「……」 「おはようございます」 「……はよ」  薮内の顔を暫く見つめて、桑島は掠れた声で呟いた。  土曜の朝六時。  雲ひとつない快晴である。    休日の朝早くに桑島の家のイン […]

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君のすべて 8

「昨日、葉月と会ったんですよ」  薮内の指先が、ベッドにうつぶせになっている桑島の背骨を撫で下ろす。  玄関先でお互いの服を剥ぎ取るように脱がせ合って、散らばった服の上で思い出すのも憚られるくらい激しいセックスをして […]

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君のすべて 7

 遮光カーテンの隙間から、日が昇る直前の白っぽい空の色が見える。桑島は薄明かりすら沁みる目を掌の付け根で擦った。  無駄にでかいベッドは男二人が離れて寝ても落下しないくらいの余裕がある。曾山はまだ寝息を立てていて、桑 […]

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君のすべて 6

 その建物には看板も目立つ装飾もなく、一見すると独身者用のマンションか何かに見えた。実際は入口に部屋を選ぶためのパネルがあり、専用のエレベーターと廊下がある──要するにラブホテルだった。  曾山は居酒屋を出てからほと […]

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君のすべて 5

「あれ、諒じゃねえか」  桑島はタクシーのテールランプから背後へと目を向けた。いいだけ酔った新谷と山口をタクシーに押し込んだところですでにぐったり疲れていたから、声の主を探すのに数秒かかる。ようやく少し離れたところに […]

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君のすべて 4

 何とも頼もしいことに、さくらは長い爪で鬼のようにキーボードを叩きまくった。ジェルネイルというのか、つるつるしてきれいな色の爪がものすごい音でキーボードに当たる。驚いたことにその速さはハリウッド映画で見るハッカー並み […]

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君のすべて 3

「だって、お前坊主だったろ」  桑島は曾山を上から下まで眺め、思わず言った。  ビデオ屋のカウンターに座っている男、曾山は桑島の中学の同級生だった。曾山は確か野球部で、野球部といえば例外なく坊主だったから、桑島の中の […]

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君のすべて 2

「おはよう。早いな」  背後から人事の畠山の声がした。振り仰ぐと、暑さに顔をしかめた畠山がまさにそびえ立っている。畠山は桑島の同期だが、百八十も後半に近い長身は、座ったままで見上げると首が痛くなってしまいそうだ。 「 […]

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君のすべて 1

「なかなか見つかりませんねえ」 「昔のものだからなあ」  桑島はそう言って息を吐いた。隣で薮内が小さく呻く。 「……嫌いじゃないっすけど」  桑島はうん、と頷き、やたらと重く感じられるビジネスバッグを持ち直す。 「腹 […]

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一歩近づけば世界が揺れる 【side:薮内桑島】

「あれ」  桑島は目を開け、天井を眺めながらぼんやりと呟いた。一瞬寝坊したかと思って心臓がひとつ跳ね、次の瞬間朝ではないと認識する。幾らカーテンを閉めていても、流石に朝はこれほど暗くない。 「大丈夫ですか?」  いき […]