仕入屋錠前屋68 性(さが) 9
「本気出したか?」 「まあ、ほとんどな。言っておくが、殺さない前提でだ」 「ひけらかすなよ、くそ。むかつく」 哲の悔しそうな声に思わず笑う。笑ったら蹴られた脇腹が痛み、秋野は低く毒づいた。哲が床の上にうつぶせに倒れ […]
仕入屋錠前屋68 性(さが) 8
どこかで何かが音を立てている。 秋野はベッドの上で起き上がり、ナイトテーブルの上を手探りした。携帯のバックライトが点灯し、時刻が表示される。音は一階の外からする。ドアを叩く重たい音だ。 哲だ、と思ったのは、何も […]
仕入屋錠前屋68 性(さが) 7
哲は目的の店を見つけ、ほんの少し足を速めた。 秋野に財布を押し付けた後、ヨアニスの連絡先を聞いた。ついでだからと秋野が連絡をすると、これから会えないかと返信が来た。正直言って面倒くさいが、仕方がない。それに、秋野 […]
仕入屋錠前屋68 性(さが) 6
「あー……、間に合わなかったか」 肩越しに振り返ると、哲が立っていた。 走ってきたのか、ほんの僅か息が弾んでいる。意外なところで律儀な錠前屋は念のためというように店内を見回した。 「ほんの少し前に帰った。すれ違っ […]
仕入屋錠前屋68 性(さが) 5
「哲は来ないのか」 しゃれたスーツに身を包んだ友人ヨアニス・クリフォードは、いかにも欧米人らしく片眉を引き上げながら、日本人としか思えない日本語で訊ねた。 「ああ」 ドライマティーニのグラスを手にしたヨアニスはG […]
仕入屋錠前屋68 性(さが) 4
そこは薄暗く、ざわついていて、ねっとりとした熱気が籠っていた。 和葉はいつの間にか止めていた息を吐き、無理矢理久登から目を逸らした。 カジノというと、ハリウッド映画で見るラスベガスのカジノがまず浮かぶ。タキシー […]
仕入屋錠前屋68 性(さが) 3
汗ばんだ肌が鬱陶しい。 「退け」 腕を上げ押しやろうとしてみたが、体重をかけられあっさり押さえ込まれてかっとする。 それでもぶん殴らなかったのは、何も理性が邪魔をしたわけでも、遠慮があったからでもない。単に右手 […]
仕入屋錠前屋68 性(さが) 2
「やめてください」 「は?」 「ストーカーみたいなこと、やめてください」 バイトを終え、裏口から出たら背後から声をかけられた。 身に覚えのないことで因縁をつけられたことがないとは言わないが、ストーカーとなれば話は […]
仕入屋錠前屋68 性(さが) 1
さが、というものなのかもしれない。 間違っているのだと、分かってはいる。 子供ではないのだ。本質的な善悪の判断は別にして、この社会の中で生きていく上で、やっていいことといけないことは理解している。 望んでいい […]
仕入屋錠前屋67 今は、ただ 5.5
「なあ、EDの薬って手に入るか」 部屋に入ってくるなりそう言って、哲はソファからはみ出していた秋野の脚を蹴飛ばした。 鍵を開けておくから勝手に入れと伝えておいたから、蹴りという名のノックはなかった。色々なことが重 […]