06

仕入屋錠前屋43 共存する全ての事柄

 どこか南米の国のサッカーチームのジャージのようだ。  一番最初に頭に浮かんだのはそんな下らない一文だった。  紺色の地の肩から腕に入った水色のラインがそんなふうに思わせたのだろう。そう考えたことすらしかと認識しない […]

06

仕入屋錠前屋42 だめなおとな 2

「それでいいって……何がですか」  仕入屋の言葉の意味を図りかねて馬鹿のように問い返した葛木に説明したのは仙田だった。安永のところと関わりのない、それなりに安全な仕事を仕入屋に探してもらったらいいかと思って、という仙 […]

06

仕入屋錠前屋42 だめなおとな 1

「何で怒るわけ? ねえ何でそんな怒るの?」 「あああああもう黙れこの宇宙人!!!」 「酷いなあ、俺は正真正銘地球人ですから」 「一遍死んでこい!! 生まれ変わってやり直せ、馬鹿野郎!!」    葛木が仙田の […]

06

仕入屋錠前屋41 足跡のない道

「クソ野郎」  秋野は、足元に横たわる男を最後に一発蹴飛ばすと中指を立て、もし男に意識があったら血管が切れそうな悪態を英語で吐き捨て背を向けた。  ここのところ五、六年前に戻ったように荒れた日々を送っていた顔は、酷い […]

06

仕入屋錠前屋40 世界でいちばん卑怯な男 7

 予想していなかったわけではない。それでも、輪島の店を出た時に姿が見えなかったから、可能性は半々だと思っただけだ。  哲のアパートへの途上、板金屋の板塀横に立つ電信柱の脇に、秋野の長い身体が寄り掛かっているのが遠目か […]

06

仕入屋錠前屋40 世界でいちばん卑怯な男 6

 結局輪島の店は哲がカウンターに飛び乗った以外は別に何の被害もなく、それも被害と言うほどのものではなかった。  哲は自らの言葉どおりさっさと後始末に取り掛かり——勿論輪島はそんなのいいよ、と言ったが哲は肩を竦めて布巾 […]

06

仕入屋錠前屋40 世界でいちばん卑怯な男 5

「すみませんお客さん、もう看板なんですが」  固まる井関と熊谷などまるでそこにいないかのように、輪島は笑顔で男に穏やかな声を掛けた。立ち上がった熊谷はカウンターの裏に移動しようとじりじりと後ずさり、秋野は興味なさ気に […]

06

仕入屋錠前屋40 世界でいちばん卑怯な男 4

「で、またお前かよ」  哲の仏頂面ににやにや笑って、秋野は輪島の店の紺の暖簾を持ち上げた。  バイト先の裏口で会ってから、まだ三日と経っていない。まったく手塚は顔の割には人が悪いと、哲はいつもながら半ば諦めて息をつく […]

05

仕入屋錠前屋40 世界でいちばん卑怯な男 3

 哲の所にダイレクトメールが届いたのは、それから一週間近く経った頃だった。  前日の夜、容赦ない虎男に襲われたせいでいつもより遅く起き、目覚めたばかりの働かない頭に有毒物質を送り込んでいる真っ最中——要は起きぬけの煙 […]

05

仕入屋錠前屋40 世界でいちばん卑怯な男 2

 川端と栄の話は何故かとんとん拍子に進んで行き、翌日栄は川端の事務所に来たと言う。あの後途中で二人を置いてさっさと帰って来た哲に、電話で川端はそう言った。 「いやあ、俺も気になってた物件でなあ。何せ事務所にするには中 […]