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仕入屋錠前屋45 傷を抱えた善 3

「ああ、あれお前のとこのバイトの子なのか」  秋野は自分の部屋のソファにだらしなく身体を伸ばして何やら本を手にしていた。  格好も部屋の中も小奇麗で洒落た感じに見える癖に、怠惰とも見える手足の投げ出し方がやけに似合う […]

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仕入屋錠前屋45 傷を抱えた善 2

「うちの主人が絵画キチガイなのは、秋野は知ってると思うけど」  想像を裏切らない酒豪っぷりを披露しながら杏子が語った話はこうだった。  杏子の夫岩倉直弥は政界にも顔がきくと噂の画廊主で、画廊のほかにも画材屋から始めた […]

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仕入屋錠前屋45 傷を抱えた善 1

 秋野の黒いジャケットが、淡いオレンジのライトに照らされて鈍く光る。  細身の美しいシルエットに高級な生地。ベルギーだかどこだかのデザイナーのもので、数十万はする。その癖一見ただのジャケットで、服にも生地にも興味がな […]