2020 お盆仕入屋錠前屋
「なあ、海に行きたいか?」 「てめえに海とか言われると何でこんな妙な気分になんだろうな、おい」 哲は銜えたままの煙草の穂先を揺らしながら、眉間に深い皺を刻んだ。 玄関先に立っている秋野の格好は、濃紺のスーツに淡い […]
仕入屋錠前屋とショートケーキ
「……」 哲は目の前の物体に再度目をやり、それが勝手に消えてなくなってはくれないことを改めて確認した。 外は既に薄暗いが、晩飯を食うにはまだ早い。時間帯のせいか、ファミレスは空いていて客はまばらにしかいなかった。 […]
理由は無い、其れ以外
その日哲は高校時代の友人と、そのまた友人と四人で飲んでいた。 隣のテーブルに座っていた同年代の女ばかりの客──こちらも偶然四人──がちらちらと視線を送って寄越したのは、その日はたまたまそれなりの見てくれのやつらが […]
その笑顔は神か悪魔か幻か 20
「一週間の在宅勤務?」 鸚鵡返しした俺に、嘉瀬さんは頷いた。 「そうだ。つーか佐宗お前、声がひっくり返ってるぞ」 「いや、だって──」 「だっても何もねえ」 「どうやって営業すんです!」 思わず言うと、嘉瀬さんは […]