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四百四病の外 1

「好きだ」  衝撃的な台詞をクソ真面目な顔で吐き出すと、台詞を発した本人は表情を変えずに背中を向けて歩み去った。去年の今頃、成り行きで門間が選んでやったマフラー。梨本の背中で翻るそのこげ茶色が、網膜に焼きついた。   […]

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追いかける

 勘弁して欲しい。門間は目の前の酔っ払いを眺めてつくづくそう思った。絵に描いたような汚い路地裏。青い蓋のポリバケツがありそうな、飲食店の裏手だ。一本入っただけなのに、表通りと違って人通りなどまるでない。  よく見知っ […]