浅からぬ縁(えにし)
「あのね、前世で平安美男だったって言われた!」 「……何だ、そりゃ」 仙田の笑顔を呆れた顔で見ながら哲は言い、こいつを何とかしてくれと言いたげに秋野を見た。しかし、見られたところでどうしようもないから、秋野は哲から […]
2010-2011 年末年始仕入屋錠前屋
「見つけたわよ!」 コンビニで煙草を買い、外に出た瞬間だった。 でかい声に、哲だけでなく通行人が一様にそちらに目を向ける。 そこには、腰に手を当てたでかい女装の男が仁王立ちになっていた。通行人はあんぐりと口を […]
2010 お盆仕入屋錠前屋
「お願いがあるんだが」 ほとんど無意識に近い状態で通話を終わらせようとした哲は、ボタンに触れるか触れないかの距離で、指先を静止させた。 電話の相手は仕入屋である。 こいつからの着信の場合、最初の一回は出ないか切 […]
2009-2010 年末年始仕入屋錠前屋
何も年末に当たらなくてもいいんじゃねえか、と自分の身体に文句を垂れつつ、哲は缶を持ち上げビールを飲み干した。 数年に一遍襲ってくる不眠が、何故か年末も押し迫った今頃やってきたのである。 どうせなら忙しい忘年会シ […]
それが真実ならいらない。
秋野の削げた頬を伝い、こめかみから流れた汗が顎から落ちた。 ぽたぽた落ちる、という表現をよく聞くし、自分でも使うことがある。雨や水滴なら、トタン屋根やシンクに当たる音を聞いたことがある。しかし、よく考えたら、ぽたぽ […]
グリル・パルツァー的キスお題8 8
8. その他に狂気のキス 「そういえば、おばちゃん駆除したぜ」 弘瀬は自分の身体に腕を回し、寒い寒いと言う間に思い出したようにそう言った。 吹き付ける風が電信柱に括り付けられたタテカンを揺さぶって、物寂しげな音を […]