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07 バレンタインデー

「何やってんだ」 「──起きたのか。仕分けしてる」  錠前屋はベッドに寝転がったまま身体を起こして頬杖を突き、半分寝惚けたような顔で秋野を見た。 「何の」 「食えるものと食えないもの」 「意味が分かんねえ」 「バレン […]

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06 洗濯機

「……なあ」  秋野が取引相手との通話を終えて中二階に上がると、ソファの上の哲がこちらを向くことなく声を掛けてきた。 「何だ」  俯く頭の位置と角度から、ソファの座面に胡坐を掻き、胡坐の上で新聞を広げているのだろうと […]

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05 クリスマスプレゼント

「それで、飾りつけは済んだの? 済んだわよね?」 「飾りつけ……?」  銜え煙草のまま首を傾げたら、煙草の穂先が崩れて灰が散った。  たまたま近くに来たから顔を見に寄ってみた、とバイト先の裏口に現れたエリは緑のスカー […]

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04 夜明け前

 仕入屋と寝るのは殴り合いの延長のようなものだと思っていたし、実際そうだった。  殴り合いの先にセックスがなくたって別にいい。何なら、今後一切寝なくたって、喧嘩さえできればいいと考えていた。  物理的にも心情的にも、 […]

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03 深夜の帰宅 – 錠前屋

 外階段を昇る足音で目が覚めた。  スニーカーのゴム底は大して大きい音を立てるわけではないが、それでも、普段の錠前屋の足音よりは大分喧しい。それに、多分若干ふらついてもいる。  鍵を開ける音からしても、酔っ払っている […]

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02 ダイニングテーブル

 出かけようと思ったら、背後から声を掛けられた。 「お前、今日ここで飯食う?」  哲は意外に早起きだが、今日は秋野が目覚めたときにはまだ不機嫌面で熟睡していた。昼近いこの時間になってようやく起き出してきたところを見る […]

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01 深夜の帰宅

 何かが首筋に当たっている。そう感じて目を覚まし、哲は低い呻きを漏らした。  動物が匂いを嗅ぐように哲のうなじに鼻を埋めていた奴は、哲が起きたと分かると、がぶりと噛みついてきた。 「痛え!」  払いのけようとしたが、 […]