17 中二階の手すり、錆の……
久しぶりに秋野を怒らせた。 虎野郎をイラつかせるのは結構楽しい。いや、嫌がる顔を見るのは至上の喜びだと言ってもいい。 だが、滅多に腹を立てない代わりに本気で怒らせたらやばいのは知っている。何せ内臓に刺さったりし […]
15 話は少し戻りまして、続き
「……服だけっつったってな……」 そう呟いて、哲は暫し途方に暮れた。 建て替えられる物件に入居しないことを改めて告げると、川端は当然だろうな、という顔で頷いた。 「オートロックだからな」 川端は祖父英治の知人の […]
14 話は少し戻ります
その日は確か土曜だった。 覚えているのは、前の日が忙しかったからだ。給料日の金曜日で気分が浮き立った客が押し寄せ、店はいつになく混み合った。哲は疲れ切って帰宅し飯も食わずに布団に潜り込んで翌日の昼まで眠ったのだが […]
10 お掃除のお兄さん
鍵を開けてドアを開けたら、目の前にえらく長身の見知らぬ男が立っていた。 哲は、手と足とどっちを出すかコンマ五秒くらい悩んで結局止めた。遠慮したわけでも男が誰か分かったわけでもなかったが、右手に雑巾、左手に洗剤のボ […]
08 いないかもしれない
哲がドアを開けると、室内は真っ暗だった。 「……いねえのか」 照明は間接照明を含め色々あるが、なにひとつ点いていない。外を歩いてきて暗さに目が慣れていた哲は、そのまま扉を閉めて施錠しソファに上着を放り投げた。 […]