untitled – TBD 11
「土屋あっ!!」 馬鹿でかい声とともに腰のあたりに何かが激突し、土屋は手に持った水のボトルを取り落とし、自動販売機に思い切り額をぶつけた。その頭突きのせいかどうか、自販機が当たりました! 当たりました! と二回喚い […]
untitled – TBD 10
「違う、ここを選択してからだ」 「あ? ああ、そっか。この日付か」 「そう。その後で……」 土屋の声がそこで途切れ、桜澤はディスプレイに向けていた目を土屋に向けた。背中からかぶさるようにされているので、斜め右上のす […]
untitled – TBD 9
「腹減った」 「なんでほとんど食い終わってるタイミングで言うわけ? サクラ」 相原は目尻に皺を寄せて笑う。若ハゲとか若白髪とよく言うが、皺は何て言うんだろうなと考えた。顔中なわけじゃなくて、笑った時の目尻だけ。 […]
untitled – TBD 8
「あ、そういやさあ、変な夢見たんだぜ!」 土屋の部屋で我が物顔に寛ぎながら、桜澤は突然言った。 「あ?」 洗濯物を畳み終えた土屋は桜澤のほうを向いた。桜澤は泊まった時用にと人の家に勝手に常備しているスウェットパン […]
untitled – TBD 7
桜澤は滅多に怒らない。もちろん、当たり前に腹を立てたりはするが、本気で機嫌が悪くなったり、そのせいで態度が悪くなったりすることはほとんどない。 だから、つい甘える。 自分の不機嫌さを容赦なくぶつける相手は誰にと […]
untitled – TBD 6
「いって……! 痛え! サクラっ」 桜澤に齧られる江田を眺めながら、土屋は豚串を口に運んだ。今日はなんとか江田に押し付けることに成功した酔っ払いは、ご機嫌でがりがりやっている。 今日はそのまま江田が連れて帰ればい […]
untitled – TBD 5
「どうしても知りたいの!」 鬼気迫る顔をした美女というのは結構怖い。 中途半端な時間のせいか閑散としたコーヒーショップの片隅の小さい丸テーブルを挟み、圧し掛からんばかりに迫られれば尚更だ。 「ほ、本人に聞けば?」 […]
untitled – TBD 4
出先で遅い昼飯を食い、喫煙所で他所の会社の知らないおっさんと二人無言で煙草を吸っていたら、江田が背を丸め、足を引きずるように入ってきた。 「よう、サクラ」 「ゾンビみてえだぞ、江田」 「顔が?」 「顔も」 江田は […]
untitled – TBD 3
気が付いたら土屋の横顔が目の前にあった。 ザ・グレンリベットのファウンダーズリザーブをトワイスアップで飲んだくらいまでは覚えている。二軒目のバーだったか、最初の居酒屋だったか。何でそんなものを飲んだのか定かではな […]
untitled – TBD 2
「だから何遍言えば——」 土屋は通知画面に表示されたメッセージのプレビューを見て低く唸り、舌打ちしながらスマホの電源を切った。 「……誰からか知らないけど、電源切ることねえじゃん。通知オフにすれば?」 「面倒くせえ […]