untitled – TBD 21
「あれ、桜澤くん?」 土曜の夜。学生時代の友人と会って軽く飯を食った。酒は飲まずに別れて駅前を歩いていたら背後から名前を呼ばれて振り返った。 「偶然だね」 「……何でこんなとこにいるんですか?」 満面の笑みを浮か […]
untitled – TBD 20
「小雪さん、好きでもないヤツと寝ちゃったことってあります?」 「何言ってんの? 私はそんな安売りしないよ」 「ですよねえ」 小雪は煙草の煙を盛大に吐きながら、カウンターに肘をついて桜澤のほうへ乗り出して来た。 「何 […]
untitled – TBD 19
同じ部署の先輩、一ノ瀬が、ある日突然髪型からスーツまでがらりと雰囲気を変えてきた。元々男前ではあったが、ちょっと前までの格好より今の方が万人向けだ。 「……どうしたんです?」 さすがに訊ねたら、一ノ瀬は何でもない […]
untitled – TBD 18
串にかぶりつく江田を見るともなく見ていたら、急に桜澤のことを思い出した。 「なあ」 「あ?」 「最近噛まないよなあ」 「噛まないで飲み込めねえだろ、何言ってんだよ相原」 「いや食い物のことじゃなくて」 レバーを飲 […]
untitled – TBD 17
外回りからようやく戻り、よく行くラーメン屋でもはや昼飯とも呼べない炒飯を食っていたら、隣の席に男が座って、醤油ラーメンを頼んだ。 昼時は混んでいて満席になる店だが、三時半を回った今、店内はほぼ空席だった。何でわざ […]
untitled – TBD 16
桜澤は腹の中の物に押し出されるように掠れた声を上げた。 「あっ、つ、土屋……い……っ、い、あ!」 「いい?」 「馬っ鹿野郎そうじゃねえっ! いいっ! 加減にっ! しろっつってんだ……!」 鬼のような顔で文句を垂れ […]
untitled – TBD 15
「土屋っ、おい! 待て待て、待てって! 待て!!」 「俺は犬か」 鼻で笑った土屋の掌がTシャツの中に潜ってきて、桜澤は身体を震わせた。由希と別れて以来誰ともセックスしていない。久しぶりに触れる他人の肌につい心地よさ […]
untitled – TBD 14
「あっ、すみません……って、何だ、桜澤くんか」 桜澤が顔を上げると、ドアから覗いていたのは今日も一分の隙もないピタピタスリムスーツに逆三角形の身体を包んだイタリア人みたいな先輩だった。一ノ瀬だ。 「ああ、どうぞ。今 […]
untitled – TBD 13
「えーっ、それはやっぱり一ノ瀬さんだと思いますぅ」 第二営業部の新人女子は頬を赤らめて言った。 「背高いですしー、優しいですしー、すっごいお洒落だしぃ……やだぁ、もう、何言わせるんですかあ!」 ほろ酔いの女子は隣 […]
untitled – TBD 12
桜澤には苦手なモノがある。そりゃ誰にだってあるだろうが、今言っているのは食い物だとか虫だとか、そういうものではなくて人間の話だ。正しく言うと、苦手なヒト、なのだが、どうもモノ、と呼びたくなる。 目の前に立つ人物に […]