20

25時 11

 顔色が悪い。まず初めにそう思った。  もしかしたら痩せたかも知れない。今頃そう気がついて、こいつは一体いつからこんな顔をしていただろうかと記憶を手繰る。しかし、思い出すことはできないまま、古河は高木の前に立っていた […]

20

25時 10

 二日間連続して男とホテルに入るなんてどうかしている。しかも二日とも違う男だなんて尚更だった。  男が好きというわけでもないのに、思えば靖人とあんなことになって以後、女性とセックスしたのは二回だけだ。いや、三回だった […]

20

25時 9

 榊は、やっぱやめた、と言って電話を放り出した高木を横目で睨み、高木がテーブルに置いた携帯を引き寄せた。 「んじゃ俺が掛けてやるって」 「いらねえよ、止めろ、馬鹿」  最近開発したこの店は大抵混んでいるが、今日は一段 […]

20

25時 8

 気がついたら社内には、古河以外は三人しか残っていなかった。  古河は顔を上げて周りを見回し、今更ながら今日は金曜だったと思い出した。それに、明日からは三連休だ。みんな飲みに行ったか、行楽に出かける前の準備でもあるの […]

20

25時 7

 古河の部屋の前で立ち止まり、高木は暫くインターホンのボタンを眺めていた。  シャワーから出てきたら、なんとなく予想していた通り、古河の姿は消えていた。先に浴びろと言ったのだが、何を警戒したのか、それとも単に面倒だっ […]

20

25時 6

 マットレスが派手に軋む音が、まるでつまらない冗談のように耳触りだ。  開かされた脚の間で高木の腰が緩急をつけて前後し、その度に古河は身を捩って悶え、無意識にシーツを握り締めた。  広いベッドに違和感を覚える。  高 […]

20

25時 5

「てかさ、最初はビールじゃねえ?」  古河は井上の顔を見て思わず言った。  体質的にアルコールを受け付けない人はいる。特別身体に問題がなくとも今日は飲みたくないという人もいる。そんな人たちが一杯目からソフトドリンクを […]

20

25時 4

 古河の言った通り、外は暑いが昨日よりは多少マシな気がした。風が少し強いせいか。しかし、ビルを出たところにある温度計は、昨日の同じ時間より二度低いだけで、相変わらず高い気温を示している。正に多少、だ。  しかし、その […]

20

25時 3

 サウナのような屋外からクーラーの利いたビルの中に入ると、突然額に汗が噴き出した。  代謝がいい方ではないから外回り後にはワイシャツが汗びっしょり、ということはないが、それでも流石に身体中がべとついている。  トイレ […]

20

25時 2

「で? どうなってんだよ、新。その、美恵子とは?」  榊の質問に、高木は思わず顔を歪めた。 「でかい声出すなよ」 「別にでかくねえし。つーか誰も聞いてねえよ、俺らの会話なんか」  確かに、榊の言うとおり居酒屋の店内は […]