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仕入屋錠前屋22 風まかせ

 葛木は、これ以上ないと言うくらい渋い顔をしている。見る者によっては可愛いとさえ言いそうなその顔立ちを歪め、寒空の下待ちたくもない人物を待っていた。土曜の午後、スクランブル交差点は人でごった返している。大きな紙袋を持 […]

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仕入屋錠前屋22 理由が必要なら

 あの丸顔の男を殴っている間、ジャケットのポケットで携帯が鳴っていた。失神した男を放り出してその場を離れながら履歴を見ると、哲だった。掛けなおすと、呼び出し音は鳴るが一向に電話に出ない。諦めて切ろうとするとやっと電話 […]

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仕入屋錠前屋22 靴擦れ

 案の定、安永は壊れたパソコンには無頓着だった。  データの載せ換えすりゃいいんだろ? 気にすんな。  そりゃ、あんたがするわけじゃないもんな。それに消えたデータの殆どは手打ちで復元しなきゃなんないんだよ。葛木は頭の […]

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仕入屋錠前屋22 データクラッシュ

 ヤスナガビジネスコンサルタントのオフィスは、雑居ビルの一室にある。一応ドアに会社名は出ているし、オフィスにはパソコンもデスクもあるが、どれもコンサルタントには役立っていない。例えば高性能のプリンターは様々な書類を偽 […]

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仕入屋錠前屋22 数センチの強み、弱み

 あの男は余程友人に恵まれていないようだ。葛木は目の前に座る金髪の男を眺めながら思った。男は貧相な体には大きすぎる革のボマージャケットを着ている。今時流行らない上に、却って体の細さが痛々しいほど目に付く。  何でも食 […]

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仕入屋錠前屋22 夢見た後で

「何だ、この手は」  玄関の扉を開けるなり仙田の刺青の入った腕で行く手を塞がれ、哲は不機嫌にそう吐き出した。壁についた仙田の腕が丁度哲の肩の辺りに来る。刺青だらけの腕に一瞥をくれて仙田を見返した。 「ねえ、あんた仕入 […]

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仕入屋錠前屋22 迷走

 広い窓から見える夜景は、それなりのものだと思う。片側の壁が全面ガラス張りの窓になった店内は、まるでネオンをバックにしているかのように煌びやかに見える。店の入り口に立った秋野は、横長の店内をゆっくりと見渡した。  会 […]

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仕入屋錠前屋21 言うなれば、自由

 どれも大したものではない。  他人が見ればゴミと区別がつかないだろう。デスクの抽斗の中に詰め込まれていた雑多な私物。  今は社名が変わってしまった生命保険会社のロゴ入りメモ帳。いつのものか分からないミントのケース。 […]

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仕入屋錠前屋20.5-2 駆引きの世界

——山城はどうなるんだか。  ナカジマと連れのヤクザに引っ立てられて行った気の毒な──心にも思っていなかったが、一応──男の行く末など、今の今まで気にしてもいなかった。しかし、哲がふと漏らした一言に、秋野は特に考えて […]

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仕入屋錠前屋20.5-1 俺式四ヶ条

 事務所に戻って来た遠山は、どこからどう見てもヤクザには見えない涼しげな顔を僅かに緩ませた。 「とりあえず、押し込めてきました。若いの何人かつけてますから、逃げ出したりは出来ないはずですんで」 「ご苦労さん」  中嶋 […]