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仕入屋錠前4 屋上の手すり、錆の匂い 1

 バイト先の居酒屋から戻った哲は、自分の部屋のドアを開けたままやや暫くそこに突っ立っていた。部屋のど真ん中に、秋野の長い身体が転がっていたからだ。  こちらに足を向けているので、下から順に眺めていく。長い脚を包んでい […]

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仕入屋錠前屋3 逃げ水

 アスファルトからの照り返しで足元からも熱気が立ち昇ってくる。  オゾン層はどこへ行ったといいたくなるきつい陽射し、足裏を焼く熱、そしてエアコン室外機の吐き出す温風。三重苦の熱に加え、湿った空気が肌にまとわりついてひ […]

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仕入屋錠前屋2 可能性のはなし

 指先が哲の肩から腕の線をなぞる。滑り下りた掌が哲の掌に合わさり、爪の先が指の腹を擦った。首筋に微かに触れる唇の感覚にぞくりとする。  あたたかくて、やわらかい。包み込まれる快感に、腹の底からふわふわと掴みどころのな […]

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仕入屋錠前屋1 自惚れさせてくれ

 その男女は親子か何かに見えた。上品な母親と、母親と一緒にいる気恥ずかしさが無愛想な態度に出てしまう息子、と言った風情。  暖かな気候の日曜日、女の気に入りのカフェのテラス席は、飲み物を楽しむ客で混み合っていた。とは […]

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仕入屋錠前屋1 フェイタルエラー

 結局どういう手を使ってか、秋野と耀司は二度ほど八重樫広告の警報を鳴らしてみたらしい。  一度目はそれなりに緊張した様子だった警備会社の二人組の社員も、二度目は一人が車で待機、ビルに入ったのは一人きりだったそうだ。 […]

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仕入屋錠前屋1 取捨選択の自由

「ああ、そりゃ多分仕入屋だ」  川端は椅子にふんぞり返ったままあっさりとそう言った。 「顔は知らんが、アキノって言う名前は知ってる」 「しいれや? 卸問屋みてえな感じ?」 「卸問屋じゃあ格好がつかんねえ……まあでも、 […]

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仕入屋錠前屋1 颯爽と

「秋野!」  無理矢理裏返した低い声に呼び止められ、秋野は渋々振り返った。走って逃げてやってもいいが、意外と俊足の奴のこと、追いつかれては同じことだし寧ろ目立つ。 「どうしたのぉ、こんなとこ歩いてるなんて珍しい」   […]

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仕入屋錠前屋1 また明日、と言える幸せ

 母親はいつの間にか消えていた。たぶん小学校の低学年の頃だったと思う。男でも出来たのか、それとも生活に耐えられなくなったのか、子供だった哲には分からなかった。  今思えば、妻に愛想を尽かされても仕方がない夫だったので […]