拍手お礼 Ver.21

「あのね、どうしても聞きたいことがあるの、てっちゃん!」
「は? 何だよ、んなことどうでもいいから注文しろよ」
「あのね、あのね」
「とりあえず生二つ」
「何よー、勝手に決めないでよ、秋野!」
「じゃあ何がいいんだ」
「えーとねえ……」
「生二つな。後で聞くから料理の注文決めとけよ」
「あっ! ひどい! てっちゃん、ちょっと! 何よこんなときだけ何で息ぴったりなわけ!! ちょっと!」
「勝、うるさい」
「勝って呼ばないでって言ってるでしょ!」
「戸籍名富田勝通称エリ、うるさい」
「腹立つわね、まったく! まあいいわ。何がお勧めなのかしら」
「出汁巻き玉子は美味かったな。好きなの食えよ」
「何よ、勝手にビール頼んだくせに」
「ザルなんだから何だっていいんじゃないのか」
「ワクに言われたくないわ」
「うるさいよ。決まったのか」
「うーんとねえ」
「はい、生ビール二つお待たせ。料理の注文は?」
「なんか前掛けに伝票持ってるてっちゃんって新鮮!」
「はいはい新鮮なお刺身もありますよーどうぞご注文をー」
「棒読みしないでってば! んーと、出汁巻き玉子がお勧めなの?」
「あー? 別にお勧めメニューは設定してねえぞ。甘くない玉子焼きが好きなら美味いとは思うけど」
「じゃあそれとねえ、あと、お刺身の盛り合わせとー、鶏の手羽先とー、枝豆とー」
「魚のすり身の揚げたの食いたい」
「はいはい」
「何か奥さんに晩ご飯の献立希望を述べる夫みたいだわ、秋野!」
「余計なことばっか言ってると食わせねえぞ、エリ」
「やーん、意地悪ぅ」
「可愛くねえし。俺もうこっち出てこねえからな、追加あったら違うやつに声かけろ」
「あ、待って待って、てっちゃん!! 聞きたいことが……」
「後にしろ、後に」
「哲」
「ああ? まったく……三分だぞ」
「え? ちょっと、何? 何が三分? カップラーメン?」
「勝、煙草買ってくるからお前ちょっと一人で飲んでろ」
「ええっ!? ちょっと、秋野! ねえ、何が三分? 何なのよもーう!!」

 

「久し振りだなあ、おい、錠前屋の坊主」
「ナカジマのおっさん」
「そんな露骨に嫌な顔しなさんな。最近元気だったかい? 実はほら、お前さんに色々訊くっていう——」
「あっ、大変だ! どうしても観なきゃいけないテレビ番組が!」
「何言ってんだい、お前さんまだ仕事中じゃあねえのか、その格好。店まで送るから道すがら話を——」
「そんじゃあ、どうも!」
「ちょ、おい、坊主…………」
「あーあ、逃げちまいましたね、中嶋さん」
「まったく、久々だってのに……追え! 遠山! 逃がすな!!」
「仕方ないですねえ。シートベルトしてくださいよ」

 

「えらい目に遭った……」
「佐崎さん、もう休憩終わったんですか? 早いですね」
「え? あー、コンビニで煙草買ってきただけだし」
「ゆっくりしてきていいって池田さんも言ってたのに……なんかすごい息荒いですね。走ってきたんですか?」
「高級車で猛然と追いすがるヤクザから必死に逃げてきた」
「ええっ!?」
「嘘だって。それより服部、客は?」
「え、えーと、今のところ落ち着いてます。秋野さんとお連れの方はさっき帰られましたよ」
「ああ、あれはいいんだ、どうでも」
「そういえば、俺前から佐崎さんに訊いてみたいと思ってたことが……」
「…………」
「あ……あって……その」
「……………………」
「…………えーと…………す」
「……………………す?」
「すみません! すみません佐崎さん!!」
「…………どっちだ」
「女性、っていうか、その、オカマさんのほうです!」
「つまんねえこと引き受けんな、まったく! 確かにエリに迫られたら怖えけどな、嫌ならはっきり断れ、服部」
「……はい」
「ああ、もう、分かった! しょんぼりすんな!! もういいから!」
「はーい!」

 

「お前さあ」
「ん?」
「他に行くとこないわけ?」
「あるよ、いくらでも。知りたいか?」
「いいえ、結構です」
「何だよ、不機嫌だな」
「うるせえな。いつもだよ」
「はいはい。何だ、あれか。勝がしつこいからか」
「いや、平田がしつこいからだ。ネタが思いつかないなら書かなきゃいいのに、往生際が悪いっていうか頭悪いっていうか、やめちまえっての」
「まあそうだけど。それで、飲みに行く?」
「嫌だ。帰る。どうせお前も何か訊くんだろ」
「勝に頼まれたからな」
「あーもう、答えるまで続くんだろ、どうせ。さっさと訊けよもう面倒くさいな。どうせ下ネタだろ」
「いや、全然」
「そうなのか」
「まったく違う。えーとな」
「あ?」
「宮●アニメで一番好きなの何?」
「……あ?」
「だってさ」
「…………はあ?」
「そんな顔するなよ。俺の質問じゃないし。訊いてくれってしつこいから」
「…………紅の●」
「え?」
「だから、●の豚。一番好きなの」
「…………」
「おい、何だよ、何だその反応」
「いや、別に……」
「何だよ、いいじゃねえか。豚だけどすげえ格好いいじゃねえか豚。名前覚えてねえけど!」
「ポルコだろ。いやそうじゃなくて、なんつーかその、分かりやすい好みというかそうでもないというか。お前って時々マッチョ発言するからねえ」
「何で知ってんだよ、名前! てか紅●豚はマッチョ関係ねえし」
「はいはい、分かった。豚な、豚。で、どこで飲む?」
「ええ!? ちょっと待て秋野、おい、豚のどこが……おい!」

 

「何なんだよ、何で盛ってんだよてめえは! 退け、この酔っ払い!!」
「酔ってないよ」
「このザル野郎が!」
「勝に言わせると俺はワクだってさ。お前はどうだろうねえ。ちょうどザルとワクの間くらいか? まあ基準を誰にするかにもよると思うけど」
「そりゃ……っていや、それはどうでもいいから退けつってんだろうが!」
「いや、●崎アニメとか言われて真面目に考えるお前がかわいくて」
「はあ!!? どっか飛んでけ! 飛行機に積載されてどっか行け!!」
「蹴ったら痛いよ」
「痛いように蹴ってんだよ!」
「うるさいよ。少し落ち着け」
「てめえこそうるせえ!!」
「馬鹿でかい声だな、まったく。ほら、みんな聞いてるよ」