拍手お礼 Ver.10

Ver.10 佐崎哲さんに聞け。

「利香ねえ、あきののお嫁さんになるの」
「おーそうかそうか」
「でもね、てつのお嫁さんにもなっていいよ」
「ああ、そりゃいいなあ。俺の嫁になってあいつを怒らせんのも悪くねえな」
「利香ね、でもね、クラスのたかしくんがカッコイイんだ」
「それ、秋野に教えてやったか?」
「ううん、まだ!」
「よし、じゃあ早速電話しろ、な? 今電話しろほら、携帯貸してやるから」
「どうして?」
「秋野、教えてやったら喜ぶぞ」
「はぁーーい!」

 

「あらやだー、久しぶりじゃない!」
「この間会ったじゃねえか」
「何よ、露骨に面倒くさそうな顔すんのやめなさいよ。秋野だってもう少し作り笑いするわよっ」
「俺はあいつみたいに器用じゃねえんだよ」
「あれは器用なんじゃなくて人でなしなのよ」
「そうとも言うな」
「さあ、エリちゃん、今日はてっちゃんに何を訊いちゃおうかしら!」
「てっちゃん言うな、親戚のおばさんかあんたは。大体、訊くって何だ。さっき利香も来たけど」
「聞いてないの? 佐崎哲さんにインタビュー企画なのよ」
「知るかよ。何だそのクソ面白くもねえ冗談は」
「作者に言いなさいよ」
「聞こえねえふりするに決まってんだろうが……。クソ虎の産みの親だけあって十分ろくでもねえんだからよ」
「ていうかあんたのでもあるでしょ。まあ、あの阿呆のことは置いておいて。さ、えーと、第一の質問はねー、セックスするとき、まずどこからキスしますか!?」
「………………………………………………」
「こっ、怖い顔しないでよっ!! 私より怖いわっ!!」
「くだらねえこと訊くんじゃねえよ……ベタすぎてつまんねえだろが」
「いいじゃない、教えてくれたって。ケチ」
「ケチで結構。次行け次」
「えぇー。じゃあねえ、好きな体位」
「中学生のガキかてめえは! せんせー処女ー? とかいうのとミリ単位で大差ねえぞ」
「だってぇ。とりあえずお約束と思ってぇ」
「わかった泣くな鬱陶しい。口、正常位」
「——そんな普通に言われたらとてつもなくつまらないじゃないのさ」
「だから言ったろうが、つまんねえって。それより泣き真似かこら」
「そうね、私が馬鹿だったわ……。こういう質問は照れる相手に訊いてこそ面白いのに」
「だったら帰れ」
「いやーん、来たばっかりじゃないの! お茶くらい出してよ」
「勝手に買って来いよ。百円やるか?」
「いらないもん。いいわよもう~。だってさあ、考えても見てよ、皆さんが何聞きたいかって秋野とのことに決まってるじゃないの」
「わかんねえぞ。料理の作り方とか、優しいピッキングとか、需要があるかも知れねえだろう。ああ、つっても解錠の方は企業秘密だけどな」
「机に足載せるのやめなさいってば。誰も聞きたくないわよそんなもん」
「じゃあ何ならいいってのよ」
「だからぁ、下ネタよ。エロよ、コイバナよ」
「あーもう面倒くせえなあ」
「だってあんた他の部分は基本的に全部丸出しなんだもん。隠してることもなさそうだし、訊くことないのよ」
「世界に開かれた男だからな」
「何よそれ。アイーダの真樹とこのみからも二人の秘密について色々訊いてきてって言われてたのにねぇ」
「誰それ」
「同僚よ。オカマよ。文句ある?」
「ねえよ」
「ああもう実りないしもう行くわ。どうせ秋野もあの顔で実は淡白だとかいうオチなんでしょ」
「ああ?」
「最中は喋らなさそうだし、」
「喋らねえけどかなりエロいぞ、あの男。えげつねえっつーか。女にもああだったらどうかと俺は思うね」
「ちょっと何よ、そういう話を待ってたんじゃないのっ!! どうエロいのよ! 想像しちゃうじゃないのさ!!」
「……詳しく聞きてえか?」
「……それはもう」
「誰が喋るか、くそったれ」

 

「……あんたまで参加なのか」
「上司の代理でね。そういやさっきでかいオカマと擦れ違ったが、ケチとか何とか喚いてたぞ」
「宇宙と交信してたんだろ」
「何だそれは? まあいいけどな。俺も次に約束があるんでぱっぱと行くぞ。じゃあまず高校は」
「——○○高校普通科だけど」
「得意な科目は」
「体育に決まってんだろ」
「苦手な科目は」
「訊くなよ、ありすぎて覚えてねえ」
「資格は」
「車の免許くらいか」
「特技は」
「料理と解錠……って、おい」
「ん?」
「あんた、面接官か何かかよ」
「ああ、中嶋さんが『遠山、根掘り葉掘り聞いて来い』って言うんでね」
「んなもん訊いてどうすんだよ」
「…………リクルートじゃないか?」
「…………勘弁しろよ……」
「ま、俺はあの人にして来いって言われたことをするだけなんでね。で、誕生日と血液型は?」

 

「何か疲れてないか、お前」
「…………疑問形で俺に話しかけるな、殺す」
「何だよそれ」
「知るかよ。入れ替わり立ち代り顔見せる奴らが次から次へと質問攻めにしやがって面倒くせえことが俺は一番嫌いなんだっつーのに」
「息継ぎしたほうがいいぞ」
「余計なお世話だクソ虎」
「まあ、窒息しようがどうしようが俺の知ったこっちゃないが」
「おまけに八割方てめえ絡みだ」
「だから、何が」
「質問すんなっつってんだろうが」
「状況が見えないんだから仕方ないだろうに」
「特にエリと仙田! あいつら口開けば下ネタしか出てこねえ」
「まあ、仕方ないだろう。担当だから」
「担当って何だよ。好きな体位だって、何だそりゃだ。そういうことしてっからいつまでも独りなんじゃねえのかエリは」
「ふうん。で?」
「でって何よ」
「好きな体位だよ」
「正常位だ、文句あるか」
「それ、女とする時の話か」
「どっちもだ」
「ああ、そう」
「にやつくんじゃねえよ気色悪ぃやつだな」
「失礼」
「何が失礼だ間抜け。何かやたら疲れたな。お前飯食ったか」
「まだだ。どこか行くか」
「魚食いてえな」
「魚……曖昧だな」
「刺身食いてえ。この間のとこでいいわ、何つった、お前の知り合いの板前の」
「ああ、近いな、そういや」
「お前は食いたいものねえの」
「正常位で錠前屋を一人」
「……死ね、馬鹿たれ」